ぶらり一人旅〜瑞西・仏蘭西編〜 第二日 バーゼル


朝食はボリューム満点!パン3種類(普通のバゲット、ライ麦、クルミ入り)食べ放題。カマンベールチーズ食べ放題。ハム食べ放題。オートミール2種類食べ放題。ヨーグルト食べ放題。ジャム、ママレード、バター使い放題。コーヒー・オレンジジュース・ミルク飲み放題。とこれでもかこれでもかと出てくる出てくる。大喜び。大いに食べまくりです。けれども他国の人は朝食は質素という習慣があるせいかみな小食。私の大食いばかりがフューチャリングされててみんなじろじろ見やがる。アジアから来たメガネの眉毛のない小娘がむしゃむしゃ喰ってるのがそんなにおかしいのか。うるせーあっちいけー。

そして市内観光へ。雨だった、傘は日本に忘れた、まあいいや。
朝一番にYH(ユースホステル)を出て美術館まで歩いて到着、がまだ開いてなかった。しかたないのでその辺をうろうろ。教会をうろついたり本屋で絵本読んだりして時間潰す。ここの街は勾配のきつい坂が多くそのためかトラムの停留所の間隔が短い。歩く気がしなくなるのはそのせいか。また通りの至る所にベンチがあってすぐ休める、私のような怠け者が多い街のようだわ。

丁度10時に美術館へ入る。バーゼル美術館はヨーロッパで一番はじめに出来た公立の美術館で、特に20世紀初頭の表現主義の作品が充実している。今回の旅行の第一目的はこの美術館に行くことだった。というのは、ここに門外不出の絵、ココシュカ作の「風の花嫁」が展示されているから。

ココシュカという人は愛すべきアホで、あんまりアホすぎてヒトラーに「退廃芸術家」のレッテルを貼られてしまったほど。私の見ようとしている「風の花嫁」は、アホのココシュカが音楽家マーラーの未亡人、アルマ・マーラーと恋に落ちていたときの2人のラブラブ絵画だ。マーラーの死後、アルマは若かったココシュカに自分の肖像画の制作を依頼する。それが縁で2人は付き合うように。でもラブラブだった期間は短くて、あっという間の破局。

ココシュカは一生懸命描いた「風の花嫁」で世に名前を知られるようになるんだけど、どこに行くにも人形師に作らせた「等身大アルマ人形」を横にはべらすので、周りの人からは思い切り引かれましたとさ。喫茶店にもコンサートにも(ちゃんと二人分チケット押さえてある)人形をエスコートして行くんだから、そりゃヒトラーも気持ち悪がるって。ちなみにアルマは、グロピウス(バウハウスを作った人)をはじめとするいろんな芸術家と付き合うように。アルマと付き合った芸術家はその直後に必ず大成功を収めるので、彼女は後にミューズと呼ばれて崇め奉られましたとさ。ちなみにミューズは日本語に訳すとあげまんです、嘘です。

「風の花嫁」はラブラブだったころに描き始められて、けれども描いているうちに2人の関係はどんどん悪化してって、絵が完成したのは2人が破局してしばらくたってからだったそうな。描き始めのときは2人を囲む背景はほんのりと赤く、寄り添う2人の表情はとても優しいものだったらしいけど、2人の関係が悪くなっていくにつれて、ココシュカは絵のトーンを自分の気持ちと同じように暗くしていった。自分の気持ちとシンクロさせて絵を描いてるから、絵の具の乾くのが待てずに(油絵の具は乾いてからじゃないと、塗り重ねしちゃいけないの)加筆を加えていった絵は現在どうしようもなく脆いものになってしまい、もう美術館の壁から移動もできなくなっている。まだ100年も経っていないのにね

というわけでその絵を見にやってきたんだ。初めてこの絵をみたのは朝日新聞の日曜版の「世界名画の旅」というコーナーだった。もう15年も前のことだよ。毎週いろんな絵が紹介されていた連載だったのに、何故かこの絵だけ強烈にドキドキしたんだ。なのに次の日が古紙回収の日だったから切り抜くのを忘れちゃってなぁ。小学生ながら悲しかったものだよ。そして今日、やっと見れる。早く見たい、でも自分をじらして他の絵もじっくり見て歩く、マゾ体質って損やなぁ。ま、ここのピカソのコレクションや表現主義絵画の充実っぷりは自分を苛めてんのを忘れてしまうくらいいいものなのだが。

そしてとうとうやってきたよ。角部屋の突き当たりに飾られていて、遠くのフロアからも見えるように置いてある。想像していたよりも遙かに大きい、181×221センチかぁ。体力いる絵ですよまったく。筆のタッチは、写真を見てた限りすべてが荒々しいと思ってたんだけれどアルマの肌だけはとてもなめらか。隣のココシュカは何度も塗り直され3センチほどまわりから盛り上がってる、レリーフみたいだ。特に顔面、眉、目の周り、アルマを抱く腕は何度も何度も修正されている。ぽっかり浮かぶ月は一筆描き。物憂げな表情にうねる波間の線はもう波じゃなくてアメーバのようだよ。2人の周りの背景にもひび割れが目立ち、少し動かしただけでも簡単に剥落しそうだ。これじゃぁ日本に持って来れないね。遠くから見たり近くから見たりを繰り返すこと数十回、警備員が気味悪がってこちらをマークしてきたのでそろそろさよならすることにした。ばいばい。泣きそうな気持ちで絵の前から立ち去る。

他の絵もちゃんと見る。ホドラー、ベックリンのプチ特集もまた素晴らしい。この辺の絵画って日本でまとめて見ることができないのだ。ちょっと得した気分。

その後駅前のカフェでサバラン&コーヒー。目の前でリキュールをこれでもかこれでもかとぶっかけて下さるゲルマン姉ちゃんがかっこよし、サバランもおいし。その場でしばらく考える。うう、これで旅の第一目的は果たせたよ、15年暖めた割には結構あっけないものよ。ついでに、第二目的もひょいひょいっと果たしちゃおっかな。そう第二目的、それは「本場のチーズフォンデュを食べてくること」さ。

街の中心部まで出て観光案内所へ。「この街で一番おいしいチーズフォンデュのお店を教えて」とまぁなんともくだらない質問を投げかけてみる。案内所の人はやたらめったら親切で地図までつけて教えてくれた。その足で地図携えて下見する、超高級レストランだったら困るからです、自衛です。辿り着いたレストランはすてきな庶民派レストラン、素敵なディナーになりそうっす。その後、現代美術館へ行くも展示換えで休館、ショック。素敵な建物だったのになぁ。がYHの真裏だったのでそのまま部屋に入って一休み。今日はドミトリーに入る。8人部屋でそのうち自分含め4人が日本人らしい。ちゃんと考えて部屋割してくれてんだね。綺麗なお部屋ですこと。

んで夕方になるのを待って、フォンデュ喰いに行く。レストランは大衆向けのリーズナブル値段。一人用のフォンデュでも快く応じてくれた。うれしいねぇ。ワイン進んじゃいますぅ、がんばって喰いまっしょい。私担当のウェイターさんはアゴの割れていないユアン・マクレガーって感じでなかなかいい感じ。食べ方(一応知ってるんだけどなぁ、思い切り田舎者と思われたのかなぁ)までレクチャーしてくれた。フォンデュは思ったよりニンニクとバターがたっぷり入っていて、大量の白ワインでチーズが溶かれている。ワイン飲まなくても酔いそうな程の量だ。でももちろんワインは飲みます。そして思い切り酔いました。ぼえー

へべれけになっても時刻は7時30分。日没は9時頃。こりゃどこかに行くしかないでしょう。と「3国モニュメント」へ。これはライン川のほとりのフランス、ドイツ、スイスの国境の交わる所にある記念碑。バスで20分、町外れのしなびたところをとぼとぼ徒歩で30分。ライン川は増水していて落ちたら即死しそうな早さで流れている。なのに柵は足下に60センチくらいのがあるだけ、人通り全く無し。もし変な人がきて背中押されたら一発だなぁ、ただでさえ千鳥足なのに。そんな気持ちで行ったモニュメントなのにものすごくしょぼい。まるで江ノ島の岩屋洞窟のようなしょぼさ。とほほ、落ち込んで街まで戻る。

気を取り直しミグロ(スイスのスーパー)に寄ってラクレリ(バーゼルのお菓子、あんまおいしくない)とピングーチョコ(御当地)を買ってお土産対策。くよくよしててもしょうがないよ。フォンデュ美味しかったじゃないか。さあ、明日はいよいよストラスブール!!



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