世界一高いワインを巡る詐欺疑惑

080625 billionaire's vinegar.jpgまたまた牛肉偽造が話題ですが、パリで発掘されたヴィンテージワインの偽造疑惑がなかなか面白いのでご紹介↓
The Jefferson Bottles 

かいつまむと、20年前、パリの隠しセラーから偶然見つかったというふれこみの18世紀のビンテージワインがロンドンのオークションに登場。有名シャトーの超ビンテージというだけでなく、アメリカの元大統領トーマス・ジェファーソンの所蔵を示すイニシャル入りということで高値がつき、そのうちの1本、1787年のラフィットは15万ドルという世界最高額で落札、「ジェファーソン・ボトル」として、当時ワイン界を騒然とさせたそうです。それが最近になってニセモノ説が浮上、訴訟騒ぎになっている、というお話。

も出てます。「Billionaire's Vinegar」(映画化権も売約済みとか)。
表紙のボトルが問題のラフィット。
Lafite(現在はLafitte)の下に、ジェファーソンのイニシャルのTh.J

ジェファーソンは大統領になる前、フランスに駐在していた時期があり、
ワイン通として有名だったらしいです。

(以下、つたない英語力による斜め読みなので、正しくは原文を)

85年にロンドンのクリスティーズで最高額156,450ドルで落札したのは、
フォーブス誌の創業者の孫、
クリストファー・フォーブスさん↓
080625 Forbes.jpg
ボトルは今でもフォーブス社に飾られてるとか。

訴えたのはフォーブスさんではなくて、
88年にシカゴのワイン会社などを通じてジェファーソン・ボトルを手に入れた
フロリダの実業家、ビル・コックさん。
080625 bill_koch.jpg
Chateau Lafiteと、
Chateau Branne-Mouton (現在のMouton Rothschild)の
1784 年と1787年ものをそれぞれ1本ずつ、計4本をご購入↓
080625 jefarson bottles.jpg

珍品を手に入れ、
20年近くもご満悦な日々を過ごしてきたのに、
なぜ今ごろニセモノ騒ぎになったのかというと、
お金持ちの例に漏れず、美術蒐集家でもあるコックさん、
080625 william koch.jpg
2005年にボストンの美術館で、「私の好きなもの」と題した展覧会を開くことに。
ジェファーソン・ボトルも展示予定だったため、美術館側から本物の証明を求められ、
調査→偽造の疑いがワンサカ→訴訟、と相成ったというワケ。

訴えられているのは、
もともとの「ジェファーソン・ボトル」の提供者である
レア・ワインのディーラー、ハーディ・ローデンストックさん。
080625 Hardy Rodenstock.jpgHardy Rodenstock
19世紀以前のワインを見つけてくるゴッド・ハンドとして、
ヴィンテージワイン界では有名なディーラーさん。
リーデルからこんな↓オリジナル・グラスもリリースしてるほど。
080625 rodenstock riedel glass.jpg

ローデンストックさんはクリスティーズの鑑定を根拠に、
本物であると主張してはいるものの、
自分はその隠しセラーへは行ったことはなく、
発見した人から購入しただけと弁明。
証明するペーバー類もこの世界の常で、とくになく、
しかもその発見者は当時もう老人だったので、
すでに死んでいるだろうとも言っているらしい。
怪しすぎる。。。

面白いのは、ワインの真贋を巡るコックさんの調査で、
さすがお金持ちというか、元FBI捜査官を雇い、
費用はすでにジェファーソン・ボトルの購入額を超えてるらしい。

ローデンストックのワインにお墨付きを与えたクリスティーズの鑑定士、
クリスティーズと並ぶオークショナー、ササビーズの元ワイン担当者、
ジェファーソン研究者、
開蓋せずにワインの年代を割り出す方法を研究している物理学者、
古いガラス技術に詳しいクラフトマン、
ローデンストックに家を貸していた大家、
同じくローデンストックにニセワインを掴まされたと訴えた収集家たち、
ジェファーソン・ボトルを褒めちぎった有名ワイン評論家たちなどが次々と登場し、
その調査過程が、まあ面白いこと!
詳しくは原文で。

080625 Jancis Robinson.jpg
↑ジェファーソン・ポトルを味わった一人。
有名なロバート・パーカーももちろん試飲し、絶賛。

ちなみに、開蓋せずにワインの年代を割り出す方法というのは、
低周波ガンマ光線でセシウム137の有無を確かめるという方法で、
セシウム137は自然には発生しないため、137が検出されなければ、
そのワインは地球が世界初の原爆実験で汚染される1945年以前に製造されたもの
という証明になるのだとか。
ジェファーソン・ボトルからは検出されなかったので、
1944年以前ということはわかったらしい。

ガラス職人さんは、彫られた文字について、
太さが均等すぎる点と刃の角度から見て、
18世紀にはなかった電動ドリルで彫ったようだと証言。

当時のクリスティーズの鑑定士マイケル・ブロードベントは、
「時間がなく、十分な調査はしてなかった」と証言。
080625 michael broadbent.jpgMichael.Brodbent
彼はもともとローデンストックさんが定期的に開催していた
ヴィンテージワインの試飲パーティの常連で、親しい間柄。

調査の中で、
ローデンストック自身の経歴詐称疑惑も浮上していて、
ドイツの有名なメガネとレンズのメーカー、ローデンストック家の出で、
元教授と自称していたらしいのだけど、
実は本名、Meinhard Goerke。
現在ポーランド領の町の鉄道員の息子として生まれ、
本人も地元の鉄道会社に勤めていたとか。

ティナ・ヨークという70年代にドイツで活躍していた歌手のファンだったらしく、
上京して彼女のマネージャーになり、
そのころから偽名と経歴詐称を始めたらしい。
080625 tinayor.jpg
ティナにモテたかったんでしょうね、
ローデンストック一族を語り、ワインもそのころ覚えたとか。
ティナには、自分の息子たちのことを甥と偽っていたらしい。
悲しいねぇ。

ちなみに、本物のローデンストック一族
080625 rodenstock.jpg

ワインに限らず、骨董品などはそうなんでしょうが、
売りたいディーラーがいて、
権威になりたい鑑定士がいて、
高額取引をしたいオークショナーがいて、
レア物で優越感や所有欲を満たしたい(もしくは儲けたい)お金持ちや収集家がいて、
みんなハッピーに共同幻想の中で完結していたのに、
コックさんが現れて、
ローデンストックさんはもちろん、鑑定したブロードベントさんやレア物自慢な人たちは、
「無粋なアメリカ人がヤボなことを」と思ってるでしょうねぇ。
彼らにとっては本物とされていることが重要であって、
本物かどうかなんて関係ないのに。

ちなみに、コックさんのセラーを再調査したところ、
130本の疑惑ワインが見つかったとか。
たとえば、Lafleur 1947年。
マグナムボトルは5本しか作られなかったのに、
コックさんのセラーに2本もあり、
98年のデータペース調査では19本が販売されていたとか。

ロバート・パーカーが100点をつけたPetrusの1921年。
コックさんが所蔵していたマグナムを蔵元に確認してもらったところ、
コルクの長さも違えば、キャップやラベルを古く見せる細工がされていたとか。
そもそも21年のPetrusは、マグナムボトルを作ってないそうな!

ことほどさように偽造ワインはすごく多いそうなので、
みなさまお気をつけて。
お口直しに、
ローデンストックさんが愛したティナの曲をごいっしょに↓


paris1.gif…………………………
パリ旅行には
パリノルールをご一緒に
…………………………

Posted by 7NT-RDBL at 2008/06/25(mer) 09:13 PM [たべもの , 映画 ] | Hatenaブックマークに追加 |

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2009/09/ 9(mer) 04:38 PM
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